新建 文本文档_146
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見つめていた。

 ニオ奪回のため隠し通路に突入した獣は狼だけではない。他にも虎や羆なども先を争って狭い通路に飛び込んでいた。周辺から次々に集まってきたゾンビの数もこの時には万を超えていたという。いかに沖田春香が鬼神のような働きをしても到底あしらえる数ではなかった。しかし屍の山が築かれていくのを目にして獣たちの士気が一時的にでも下がったのは間違えない。そういう意味では沖田春香は流れを断ち切ったといえる。先頭の狼たちが尻込みした隙に沖田春香と朱雀は後退した。手にしていた刀は反り返ってもう使い物にならなくなっていたらしい。沖田春香が討ち漏らした獣だけを相手にしていた朱雀であったがすでに数か所手傷を負っていた。対して沖田春香は無傷。呼吸すら乱していなかったようで、まるで散歩の帰り道のようだったと朱雀が後年語っている。
 押し始められたのはやはりゾンビが前線に出てきてからのことである。獣たちは本能のどシャープペンシル 高級
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かで死を恐れる節があったが、ゾンビにはそれがない。腕が斬られても勢いは止まらない。そしてこちらは一筋の傷口が致命傷になる。十倍の戦力を持ってしてもゾンビを殲滅すのは難しいと言われていたのはこのためである。
 沖田春香は一刀でゾンビたちの首を落とした。殺すことはできないまでも戦闘不能の状態にはなる。首の無いゾンビは両手を突き出してウロウロと前進するだけであった。朱雀も手にしたコンバットナイフで首を両断しようとするが、片手ではその威力を出せなかった。敵の牙と爪を躱して両手で握ったナイフに全力

N5747Z-9
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今回もグロ描写は殆どありません

ただ、分量的には一番多いかと思います
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青年と犬と抜け殻の街

 狭苦しい道があった。農地の間を進む、あぜ道を補修し、上にコンクリートを敷いたであろう田舎道だ。その道を、一台のキャンピングカーが進んでいく。

 全面を地金が見えない程板金を貼り合わせて溶接した、とても一般的とは言えないキャンピングカーであり、前面には簡素ながらもドーザーまで備えられている。

 その車の運転席で、一人の青年と一頭のシベリアンハスキーが暇そうにしていた。青年は道を眺めながらハンドルを取り、ハスキーは助手席で体を丸めて眠り込んでいる。

 運転席の中では音楽が鳴り響いていた。備え付けのカーステレオにCDを読み込ませ、それが控えめの音量で垂れ流されているのだ。

 音楽は、ギターとベース、そしてドラムが喧しく鳴り響くロック、それもヘヴィメタルに分類される2013 新作 財布
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音楽だった。青年の趣味ではなく、単に積んである物を眠気覚ましの為、適当に流しているだけだ。

 CDはイギリスのブラック・サバスというバンドのデビューアルバムであり、文字通りブラック・サバスと銘打たれたアルバムの、BLACK・TABBTHという曲が流されている。そのまんま過ぎるとは思うが、代表曲というには相応しいタイトルといえよう。

 人間の恐怖心を煽る単調にして陰鬱な旋律に、暗い日曜日と訳された邦題。命題からして人の恐怖をかき立てる楽曲だ。

 そういえば、何時だったかサークルの友人が部室でストックを磨きながら、そのバンドに関して熱心に語っていたような気がした。ヘヴィメタルの元祖がどうとの言っていたが、自分の趣味では無いので既に記憶は遙か彼方、脳細胞のパルス、その合間に消え去っていたが。

 どうせなら好きな楽曲でも流したいのだが、カラヤンの第九にもいい加減飽きたし、今までは余裕がなくてそういった娯楽品は大抵無視していた。時折、コンビニで手に入る本や雑誌を読み捨てていた程度だ。

 それも、最近はめっきりしなくなったのだが。刊行日が四月以降新しい雑誌が出ず、コンビニに並んでいるような物は全部読み飽きてしまったのだ。十二月にもなろうというのに、四月号を何回も読むのは不毛なので興味すら沸かなくなった。

 青年は片手でハンドルを操り、路肩に転がっている死体を避けた。動かないのと、首が見当たらなかったので、多分完全に死んでいるのだろう。

 しかし、同じ風景が延々と続いて全く変わらない。田圃と山が広がっているが、愛知県の辺境とはここまで牧歌的な風景が広がっているのだろうか。とはいえ、色々彷徨いている時に一度通りかかっただけなので何とも言えないのだが。

 だが、田舎を走るのは悪い物では無い。空気は良いし、窓を開けて走ると気分が良い。視界が開けているので、死角より死体から奇襲を喰らう事も無ければ、ビルの屋上から死体が落下してきて驚かされる事も無い。

 青年は大都市に近寄る事を徹底的に避けていた。死角が多く死体が無尽蔵と思える程居る等、様々な理由があるが、一番の問題は車である。

 異変が起こった時、避難しようとした大量の人間が我先にと車に乗り込んで幹線道路を占領し、そして逃げる為に車置き去りにしていった。少々であったならばドーザーの隅っこに引っかけるようにして押し出しても良いのだが、それが何十、何百台ともなると道を走る事すらままならない。

 その為、今やこの図体の大きなキャンピングカーでは大都市にアクセスする事自体が難しくなっていた。

 次に、大都市程連中が多い。元々死体は人である、それも生きていた。つまり、人口が多ければ多いほど密集している。そして、連中は本能に従って動く。

 つまり…………。

 そんな事を考えていると、稜線の向こうに屋根が見えた。一つや二つでは無い、集落といって良い密度でである。どうやら、田圃の間を延々走っている内に、別の農村に辿り着いたらしい。ふとカーナビに目を落とすと、確かに小さな集落が映されていた。

 とりあえず、何か使える物は無いか街を探してみよう。青年がそう思って速度を少し落とすと、カノンがそれに気付いて頭を擡げた。

 地方都市の造りは何処も似たような物だ。青年は何処か止めるところは無いかなと一瞬考え、別に道路のど真ん中に止まったって誰に憚る事も無いのだと思い出し、少し可笑しみを感じた。口の端を片方だけ釣り上げる例の笑みを浮かべ、青年は車を止める。

 カノンが耳をひくつかせながら此方を向いたので、とりあえず頭を撫でてやる。洗ってからあまり時間が経っていないのと、彼女が綺麗好きと言う事もあり、撫で心地はとてもよかった。

 さてさて、何か使える物が街にあればいいのだが、そう思いつつ長時間座席に落ち着かせて居たせいで汗ばんでシートに張り付きかけていた尻を引っぺがし、後部の居住区へと移った。

 相変わらずそこら中に木箱が積み上げられて手狭な室内だが、整理はされているせいで雑然とした雰囲気は無い。ただ、狭苦しさはどうしようも無いのだが。

 時刻を見ると、十一時を半時間ほど回った頃だった。朝から走らせているのだが、どうやらカセットコンロの為に大立ち回りをやらかした街から50km程離れた場所だろう。

 車をゆったり走らせ、農家を見つける度に死体が動いていないか双眼鏡で確認してきたので、移動距離はかなり短かった。

 ベッドサイドに放置していた双眼鏡を取り上げ、実に億劫そうに天窓を開けて階段を引き下ろした。今日はしっかり睡眠時間を確保したというのに、とみに眠い。天気が良いのは悪くないのだが、眠くなってしようが無い。

 このまま昼寝を決め込んでしまいたかったが、一度サボると暫く同じ場所で移動せずに滞在してしまうので、それは避けたかった。天気が悪い日は安全の為に動かなくて良いのだが、出来れば年明けには一度大阪を見て起きたかった。

 車が幹線道路を塞いでいる為に様々な所で大回りを強いられるので、時間は多めに見積もった方が良い。別に何日までに着いておかないとならない訳では無いのだが、予定を立てるというのは生活に張りを持たせる為に大事だ。

 そうでなければ、息抜きと称して死体が少ない街を見つけたら、そこで食料を食いつぶすまでだらだら過ごしてしまう。人間だから辛い事を避けようとするのは当たり前かも知れないが、この常況でゆったりしている暇なんてありはしない。

 青年は眠気を押し殺しながら屋根に上がり、双眼鏡を眼に押しつけた。つまみを調節してピントを合わせ、街を観察する。

 ……静かだ。確かに連中は昼間はあんまり表に出てこないのだが、それでも何体かフラフラ出歩いている事も多い。しかし、この街にはそれが見当たらなかった。

 別の通りや方角を見てみるが、やはり死体の影は無い。これは……。

 「移動したか」

 青年は呟きながら、双眼鏡を下ろした。

 たまに、こういう事があるのだ。死体共は本能に従って動く。その本能は、食べる事と増える事だ。その本能を満たすには、人間が必要不可欠なのである。

 つまり、連中は人が居なくなると移動始める、生きた肉を求めて。何処へかと言うと、無論人が居る場所へだ。

 風に乗って届くであろう臭いを頼りに、人が全く居なくなった街の死体は新鮮な肉を求めてノロノロと移動を始める。近くに全く気配がなければ、あのサービスエリアのようにずっと溜まっている事もあるが、臭いのような行くアテを感知するとゆっくりとだが向かっていくのだ。

 つまり、人間が近くに生き残って立て籠もっていると、其方の方へと向かっていくのだ。そして、少しずつ数を増やし、その内に圧殺していく。都市部で立て籠もるのは緩慢な死を誘うのである。

 その結果として辺境には生きた人間も死体も居ない、抜け殻のような街が出来上がってしまうのだ。丁度、この街のように。

 まだ確定した訳では無いが、恐らくは死体は居ないか、居てもごく僅かだろう。青年はガソリンの補給や食糧の補給が出来るだろうかと期待を膨らませながら、下に降りた。

 とりあえず、車で近くまで寄ってみてから反応を見よう。連中が残っているのなら、このキャンピングカーの無駄に喧しいエンジン音に反応する筈だ。

 運転席に戻り、アイドリングさせたままサイドブレーキを引いて止めていたので、ブレーキを戻してアクセルを踏み込む。助手席のカノンはもう寝そべってはおらず、シートの上に座り込んで前を見据えていた。

 「臭うか? カノン」

 聞いてみると、小さくカノンが鳴いた。どうやら、あまり強い臭いは感じないらしい。これはいよいよ当たりか?

 街と田畑の境界にまでやってきたが、まだ動きはない。とはいえ、奥からはい出そうとしている可能性もあるので、今すぐ探索に乗り出すというのも、ちと早急に過ぎるだろう。

 と、なると……。

 「飯にするか、カノン」

 青年はエンジンを止め、そう言った。カノンもそれに応え、小さく吠えた…………。










 十数分後、普段銃の整備に使われている硝子天板のローテーブルの上にはカセットコンロが置かれ、その上で小さい鍋にて二つのパックが煮られていた。

 一つは本来電子レンジで温める米飯のパックであり、もう一つは甘口のレトルトカレーだ。

 こういったレトルト品は、前までは食べたくても発電機を動かさなければ調理出来なかったので、あまり食べられなかったのだが、この間危険な目に遭いながらもカセットコンロを手に入れたので最近は気軽に食べる事が出来るようになった。

 全く以て火という物は偉大だなと実感しつつ、割り箸で浮いてきたレトルトパックをつまみ上げる。そろそろ良いだろう。

 熱いのを我慢しながら指先で挟むようにしてパックを開き、米を皿に盛る。実に日本人の食欲を誘う甘い香りのする湯気が立ち上った。やはり日本人であるなら、一日一回は米を食べなければな。

 等と勝手な民族感を青年が抱きながらレトルトパックを破り、香り立つスパイスの臭いを暫し楽しんでから米の上に開けた。レトルトの割にジャガイモの形がしっかり残っており、実に美味そうだった。

 皿に盛られ、水のペットボトルとカレー、銀のスプーンが並んでいるだけで実に食欲がかき立てられる。俄に口の中に唾液が分泌されるのを感じながら、青年はスプーンを手に取った。

 そして、その隣では皿に盛られたドッグフードを前にカノンが座って待っている。青年が食事を始めるまで待っているのだ。

 食前の挨拶をいざ始めようとし、いただきますの、「いただ」まで言い終えた頃、不意に声が聞こえた。

 『おーい、名無し氏ー』

 少し緩んでいた青年の顔が厳しくなり、視線が運転席の方に向かう。ああ、そういえば昼時だからと無線機を付けっぱなしにしていたか……。

 脳天気な声が無線機のスピーカーから僅かなひび割れと共に響いている。青年は数度視線をカレーとアマチュア無線機の間で巡らせた後、一度深い溜息を吐き、スプーンを机の上に置いた。

 カノンがその青年を見て、首を傾げながら小さく鼻を鳴らすような声を出した。青年はそれに振り返り、先に食べて良いぞ、と言うも、それでもカノンは皿に顔を埋めようとしなかった。

 食事を邪魔された事に自分が苛立っているのを自覚しながら、青年は運転席に乱暴に身を投げ、無線機の送話器を手に取った。

 「私だ。何の用だ」

 『あ、あれ……名無し氏、ご機嫌斜め?』

 無線機の向こう側、遙か遠く大阪の何処かにあるショッピングモールにて立て籠もっている女は、震えた声を出す。普段通り平坦な声ながら、露骨に不機嫌そうな雰囲気を放つ青年の怒りを察知したかのように。

 「別にそんな事は無い。ただ、私のカレーが冷める前に要件を終わらせて欲しいだけだ」

 『あちゃー……お食事時にお邪魔しちゃいました? これは失敬をば』

 台詞は謝罪しているが、声の調子は普段通り明るい。こいつ本当に悪いと思っているのかと眦を上げかけたが、怒ると返って話が長引きそうなので、青年は無理矢理平素を装って続ける。

 「それで、何かあったか? 此方は普段通りだ」

 『いやぁ、暇だからさぁ。昨日も言ったけど、最近周囲がピリピリしてて、大きく動けないのよねぇ』

 間延びした口調で言われるので、本当に常況が逼迫しているのか妖しいが、今の所嘘を吐かれた覚えは無いので多分本当だろう。急造のコミュニティなんぞそんな物だ。

 青年は続きを促しながら窓枠に肘を突き、フェンス越しに外を見る。

 先ほどまでと同じで、完全に静かで何も動く物はない。時折鳥の鳴き声と、吹き抜ける風が電線を吹き抜ける時に響かせる寒そうな音がするだけだ。

 死体がどこからかやってこないかと警戒しつつ話を聞くに、どうやら向こうのコミュニティも中々に荒れているらしい。血気に逸った連中が、外に物資を取りに行くべきだと騒いだり、暴行事件が起こったりと結構な世紀末な様相がのんびりした口調で語られる。

 そんな事を聞きながら、青年は頭を軽く搔きながら、一人と一匹が実に気楽かを噛みしめた。全く以て有り難い物である。

 『おやっさんは、しっかり訓練してから行くべきだって説得しようとしてるんだけどさ、最近の若いのは訓練とか泥臭いの嫌いだからねー』

 「お前幾つだよ」

 素で突っ込みを入れつつ、ふと通りの奥で影が見えたので視線を集中させる……風で倒れた何かの幟が揺れていただけだった。紛らわしい所で倒れて居るんじゃない。

 『何度も言うけど、硝子の十代さ!!』

 「その言語センス的に30代以上だろうが」

 何時の時代のキャッチフレーズかは数ヶ月前まで大学生であった青年には詳しく分からないが、やはり響きからして古い。通信機の向こうで騒がしく抗議が始まったので、殆ど無意識の内に音量のつまみを最小付近にまで捻っていた。

 暫く放置し、騒ぎが収まったかなと思う頃に摘みを元に戻す。何やら荒い息と、

 『分かった!?』

 という叫びだけが聞こえた。適当に相づちを打ちながら、再び続きを促す。相手の怒りというのは受け流すのが一番だと青年は経験則から知っているので、決してまともに取り合う事はない。

 激流に身を任せ同化する……そんな事を思いつつ、少し息の荒い説明を聞く。大抵の事をそつなくこなし、大きな失敗さえしなければ人生とはある程度簡単な物なのだ。最も、こうなる以前なら、の話であるが。

 『彼奴等、本気で金属バットとか改造したさすまただけで何とかなると思ってるのかな。私の予測だと三分持たずに追い詰められて圧殺されると思うんだけど』

 死体共は鈍重で、単純だ。故に、弱いかと聞かれれば確かに弱い。単体の死体がノロノロ寄ってきたのであれば、適当に長い棒きれで頭をたたき割ってやればいいのだから。 

 あ、いや、人間の頭をたたき割るのは難しい事なのか?

 青年はかつての常識から大きく外れてしまった自分の感性に首を傾げながら考えを纏める。

 連中の強みは、その数だ。一体一体は脆くて鈍い腐った死体に過ぎない。確かに、色々と吹っ切らないと気分が悪い上に臭くて不快だが、慣れたらそれ以上の何者でもない。だが、一度数が集まるとどうしようもなくなる。

 人間であれば、山ほど集まろうと一定数が痛い目を見れば逃げてくれる可能性もあるだろう。特に、自分が銃を持っているが相手が丸腰という常況であれば。

 だが、死体は恐れを知らない。傷つく事を避けようともしないし、例え傷ついても浮腫を理由に足を止める事はない。ただ、原始的でどす黒い欲求を満たす為に、腕を伸ばし呻きを上げながら突き進んでくる。

 一体を潰しても、その死体を押しのけて次の一体が。十体を吹き飛ばしても、肉片を踏みしだいて次の十体が。百体を撃ち殺しても、その百体を貪りながら次の百体が……。

 尽きる事を知らぬ物量と、死を恐れぬ軍勢程恐ろしい敵は他はないだろう。それも、多く見積もればだが、そんな軍勢がこの狭い国内だけで一億近くいるのだから。

 青年のように生き汚く生き残った人間が何人居るかは分からないが、間違いなく死体の方が多いだろう。そして、青年が今までに始末した数は数万分の一以下の数に過ぎないのである。

 戦車や潤沢な弾に、よく整備された銃でもあれば話は別だが、そんな連中に釘バットやらさすまた一本で立ち向かえと言われれば、青年なら命じた相手の頭をそのバットで叩き潰しているだろう。

 「その連中、実戦経験は?」

 『殆ど無いよ。敷地内にフェンスの綻びから入り込んだ何体かを叩き潰した程度かにゃ?

 なるほど、適当に斃して自信が付いた頃か。確かに調子づいても仕方あるまいて。それが免罪符になる訳ではないのだが。

 「数は多いのか?」

 『力仕事やってる若いのが一五~六人だねぇ。自警団はまだ理性的だけど、それでも焚き付けられてる上に、実際物資少なくなってきてるから何時まで抑えられるか。おやっさんも大変だよ』

 気軽に言っているが、正に暴発一歩手前という常況ではないかと青年は暫し頭を抱えた。下手に門を開けてしまったら連中が雪崩れ込むと分かっているだろうに、なんでそんな無茶をしたがるのやら。

 「死にたがりが多いようだな」

 『勝手に死ねって言えないのが辛いところだねー。いやはや何とも』

 本当に困っているのか妖しい言いぐさであるが、困窮している事に違いはあるまい。そこまで逼迫した常況なら、青年であれば足抜けを考えて少しずつ準備を始める所だろう。

 『あー、もう……名無し氏ー、助けてよーう』

 「私からも何度も言わせて貰うが、そんな余裕は逆さに振っても無い」

 迷うことなくノータイムできっぱりと言い切った。助けるリスクの方がメリットよりも高いのだから、青年からして助けても良い事は何もない。

 車も武器もみんなの生活の為と奪われて、コミュニティの体の良い尖兵にされるのが目に見えていた。そして、足抜けしようとしたら自分から奪った銃で自分を撃ち殺すのだろう。別に深く考えないでもよく分かる。

 人間は余裕がある常況ならば寛大だが、余裕が無ければその残酷さは他のどの生物にも勝る。だからこそ万物の霊長なんぞと嘯いていられたのだろうが。

 考えている間に、また通りで何かが動いた。今度こそか? と思い視線を集中するも……痩せた野良猫だった。一瞬強ばった体の力を抜き、シートに身を深々と埋める。猫という生き物は逞しい、こんな世界になっても生き延びているとは。

 「ともかく、適当に言い含めて集団行動の訓練をするなり、少しずつ死体の数を減らす努力をするべきだな」

 『しちゃあ居るんだけどねー。でも、すっごい増えてるんだよ。何処からやって来るのかは分かんないけどさ。それに彼奴等言う事聞かないし』

 珍しく、間延びしながらも本当に不機嫌そうな響きが言葉に含まれていた。どうやら、近場の生き残りが少なくなり、人間が大勢立て籠もっている彼女のコミュニティに引き寄せられているのだろう。いよいよ武器が無い人間には辛い常況に陥ってきているな。

 『それでも、死にたくないから努力はしますけどね~』

 そうしろと言いかけ、ふと腕時計に目をやると、時間は十二時半にまでになっていた。

 あっ、と思い後ろを見ると、カノンがどことなくうんざりした様な顔で床に寝そべり、最後に見た時は美味しそうに湯気を立てていたカレーはすっかりと冷え切って表面に薄い膜を作っていた。

 ……ろくな事がない。ため息を吐き、どうしたのと聞いてくる無線機の向こうの少女に、言葉少なに切る旨を伝えて電源に指を伸ばした。

 無線機の向こうで何が起こっているか分かっていない少女は声をうわずらせて焦りながら引き留めようとしたが、青年は一切気にせず電源を指で弾いて切った。

 電源が入っている事を示す赤いランプの灯りが消え、先ほどまで細かに震えていた受信計の針が一気に0へと落ちる。ようやく静かになった。

 やれやれと思いながら、適当に送話器を無線機に投げつけるようにしてフックへ引っかけ、体をシートから引き上げる。折角美味い食事にありつけると思っていたのにご覧の有様だ。

 缶詰から取り出され、ほぐした折角の食事が乾燥してパサパサしつつある皿を見つめ、カノンが少し悲しそうな顔をしていたので、青年は小さく謝罪の言葉を漏らしながら、皿を取り上げた。

 湯を沸かしてちょっとかけてやれば、少しはマシになるだろう…………。










 お湯を掛けたおかげで潤いを取り戻したドッグフードをカノンが美味しそうに平らげ、冷めて微妙に硬くなり、粘質を帯びてしまったカレーを青年がスプーンでねじ込む。味は冷めても悪くなかったが、何だか空虚感と侘びしさを感じた。

 肩を落として、ただでさえ低めの背を丸めて皿を少量の水で洗い、青年は水切り籠に自分の皿とカノンの食餌皿を乗せる。例え気落ちしていても、生活環境を整えるのは習慣の為せる業だった。

 しかし、環境が悪いと更に気落ちするので、整頓に努めるのは合理的な思考ではあるのだが、如何せん本人はそれを意識して更に気落ちする。なんだか普段から生くるべくして生きているのに、より無機質になった気がして鬱になるのだ。

 自分にまだそこまで繊細な感性が残っている事を喜ぶべきなのか、まだまだ甘いと嘆くべきなのかは、結局考えても更に鬱になるだけのなので思考を打ち切る。今考えるべき事は……。

 「此処は完全に空と見ていいな」

 なんだかんだやらかしながら一時間車を止めていたが、全く以て街は静かだ。死体が蠢いているようでもなければ、誰か人が住んでいる訳でもなさそうである。

 この街にはもう生き残っている人間がおらず、死体共も新鮮な肉を求めて何処かに行ってしまった。ここは、生者にも死者にも見捨てられた抜け殻の街という訳だ。

 いや、その方が自分には有り難いのかもしれないなと思いつつ、青年はジャケットを脱ぎ、防弾ベストを着込んだ。

 死体が居れば戦いになるし、人間が居れば大抵の場合は諍いは避けられない。出来れば銃を撃つ常況には陥りたくないが、必要となれば撃たざるを得ないだろう。

 ナイフを固定し、M360をホルスターへねじ込み、ベルトにニーホルスターを通して同じくマチェットもぶら下げる。装具を完全に整えている青年を見て、カノンも体を擡げる。食後に動くのは億劫だろうが、ここは殆ど安全とみて良いだろう。

 とはいえ、気を抜く訳にはいかない。動けない死体が残っていたり、建物から出られないで取り残された死体が居る可能性もある。また、実は生きた人間が隠れている可能性だって無いとは言い切れないのだ。

 自分が一番最初にこの抜け殻の街に訪れたとは限らないし、死体が居ないのを良い事に住み着いた人間が居ても不思議ではないのだから。

 青年は散弾銃を手に取り、鹿撃ち用の大口径スラッグ弾をねじ込んでいく。チョイスしたのは、レミントン社製の伝統的なポンプアクションショットガンのM870なのだが、オリーヴグリーンのマット風塗装が施されている上に、内蔵マガジンのチューブがかなり長く、八発も装填できる。

 国内法では、確かポンプアクションの猟銃であっても内蔵マガジンチューブを切り詰めて、装填数を少なくしたオミット品でなければ所持できなかったと記憶している。だが、これにはしっかりとスペック上の限界数まで弾が装填できる。

 硬質プラスチックと鉄の混合物の手応えを感じながら、仕様から推察するに自衛隊の装備だったのだろうか。自分がこれを拾ったのは、死体が散乱する路地の片隅だったので持ち主を確認していないのだが、民間人はこんな物を持っては居ないだろう。

 12ゲージのショットシェルをポーチにバラでねじ込み、探索の準備は完了した。自分で指先を切り落として作った指ぬきグローブを装着し、レミントンのセーフティを外す。そして、スライドをポンプして初弾を薬室へ装填した。

 「よし、行くか」

 それに応えるようにカノンが小さく鼻を鳴らす。それを聞き、青年は満足げに居住区の扉を開けて、表に出た。

 段差を経て地面に降りる。アスファルトの地面と鉄板の入ったブーツのソールがこすれ合って独特の音を立てた。

 ショットガンをスリングで肩に通したまま油断無く持ち、周囲をじっくりと見回す。ただ、冷たい真冬の風が吹き抜けていき、何処かでごみが転がる音がした。

 「……静かだな。どうだ、カノン」

 隣のカノンに問うてみると、やはり臭いはしないのか首を傾げて見せた。やれやれ、どうやらここは本当に空っぽであるらしい。

 青年はカノンを後ろに伴い、ゆっくりと一歩を踏み出す。剥離したアスファルトや砂利を蹴散らしながら、静かに街へ侵入した。

 細い道路が走り、背の低い平屋が何軒も何件も建ち並んでいる。その合間に、小さな煙草屋や個人商店、スーパーなんぞがちらほらと軒を連ねていた。見た目だけは本当にのどかな田舎町だ。端から端まで見たとしても広さは殆ど無く、精々人口も何千人かという当たりだろう。

 しかし、街には所々に血がぶちまけられた後が残っている。壁や道路が、酸化して真っ黒になった血で前衛芸術の如く飾られ、食い荒らされて散らばった内蔵や肉の欠片が干涸らびて転がっていた。

 これさえ無ければ清々しい散歩であるのだが、死体はこんな場所でもしっかりと本能に従って暴れていたらしい。警察署、と言うよりも駐在所という存在が似合いそうな場所なので、ひとたまりも無かったであろう。

 ふと、磨り硝子の引き戸が開け放たれたままの家があったので、中を覗き込んでみる。土間があり、一段おいて廊下がある伝統的な日本家屋だ。

 土間には小さなサイズの古いスニーカーや履き古された革靴が放置されていた。スニーカーはお洒落なデザインの物ではないので、恐らく老夫婦が住んでいたのだろうか?

 確認の為に家へ上がり込む。お邪魔しますと小さく呟きながら、若干抵抗のあるものの、土足のままで廊下へと上がった。板張りの廊下が奥に続き、奥には外れ掛かった暖簾の向こうに厨房が見え、両側面には襖戸があるが、右側の物は無惨にブチ破られていた。

 破られた右側の部屋を覗き込むと、大きな畳の間があった。テレビに大きめの座卓……恐らく茶の間だろう。かつてはここで家族が暖かな夕食を囲んでいたのだろうが、今残されているのは潰れた座卓と、倒れて画面が割れた古いテレビだけだ。

 久しぶりに懐かしい藺草の香りを感じ、青年はたっぷりとその匂いを肺に取り込んだ。実家の私室は和室であり、畳の匂いは郷愁と落ち着きがこみ上げてくる。郷愁の念にかき立てられると同時に、僅かな腐臭が鼻を掠めた。

 一瞬、その臭いに反応して驚いたが、カノンが此方に危険を知らせていないので、恐らく普通の腐乱死体なのだろう。

 安心して再び部屋を見回す。特に目に付く物はなく、足下に四月の日付の新聞が転がっていた。取り上げてみると、日付は四月一四日となっている。確か、自分が履修登録を済ませた日だったろうか。

 茶の間にも襖があり、別の部屋に通じていたが、大きな畳の間が延々と続いているだけだった。どうやら古い家にある、襖を取り払ったら大きな宴会場になるという類いの部屋だろう。奥に衣装棚等が置かれていて生活感はちゃんとあるが、見るべき物は特に無い。

 次に、廊下に戻って襖をそっと開け、左側の部屋を覗いてみた。右側の部屋と同じくらいの広さがある和室であり、床の間と仏間があり、古ぼけた仏壇がそのまま放置されていた。そして、畳まれる事なく捨て置かれた蒲団が、すっかり埃を被って色褪せていた。

 敷かれたまんまの状態で、抜け出した事が分かるように掛け布団が真ん中から折られていたので、恐らく起き抜けに事件が起きたのだろう。

 青年はふと、その部屋の棚の上に置いてある写真立てが気になり、手に取ってみた。

 人の良さそうな老夫婦が、その老夫婦をそのまんま若くしたかのような夫婦に肩を抱かれて微笑んでおり、その前では小学生低学年と思しき少年が真っ白な歯を輝かせながら映っている。

 写真の褪色から推察するに、かなり昔の写真だろう。フレームを外して確認してみると、1992年と裏側に撮影日が表示されていた。

 写真を元に戻し、隣に置いてある物を手に取る。そちらには、より老化の進んだ老夫婦と、がっしりした体格の青年と線の細い女性が家の前で笑っていた。撮影日は2008年……どうやら、あの写真の少年が成長して農家を継ぎに妻と帰ってきたのだろう。その姿は幸せそのものだ。

 青年は何も言わないで写真を戻し、部屋を後にした。そして、破れて垂れた暖簾を退けながら厨房に入り込む。

 厨房はかなり古い物で、竈が潰された痕まであった。どうやら、古い家を改築して今の姿になったのだろう。古いシンクに水が溜まっており、戸棚の中では使われる事の無い食器が埃を被っていた。

 シンクの隣に置かれた大型の冷蔵庫は電源が断たれて久しく、とてもではないが開けようとは思わなかった。密閉されているから匂いはしないが、きっと中は酷い有様だろう。

 シンクにはプラスチックの盥が置いてあり、中で水が腐って嫌な匂いを発していた。黒く変色し、妙な滓が浮いているので、恐らくは夏にボウフラでも沸いたのだろう。

 その盥の脇から、何やら木の棒が覗いていたので摘んで取り出して見たが……酷く錆び付いた包丁が出てきた。どうやら中に取り残されていたようだ。

 朽ちる程錆びた包丁をシンクの上に戻し、青年は厨房を見渡す。放置されて久しくても、何処か、かつて作られていた料理の残り香がするような気がした。

 厨房の奥には階段があり、二階に向かって大きな口を覗かせており、勝手口がある。恐らく裏庭に繋がっているのだろう。青年はまず、勝手口のノブに手を伸ばしてみた。

 軽く捻る……抵抗なく最後まで回り、扉が開いた。そのまま注意深く押し開けて裏庭に出る……なんて事の無い、木の塀に覆われたそこそこの広さのある庭があった。

 同じく時代を感じさせる小さな土倉が立っており、犬小屋もある。だが、犬小屋には鎖と、外れた首輪だけが残されており犬の姿は無かった。

 「タロウ……か、またベタな」

 青年は言いながら犬小屋の中を覗き込み、打ち付けられたネームプレートを見つけた。中を探ってみると、白い毛が残されている。かつて此処で飼われていた犬は、真っ白でフワフワした犬だったのだろう。

 埃の積もり具合からして、少なくとも数ヶ月は完全に誰も入っていないのだろう。犬は逃がされて何処に行ったのやら。少なくとも、カノンが反応していないので近くには居ないようだ。

 青年は犬小屋から離れ、土倉に向かった。カノンはまだ興味深そうに首輪の匂いを嗅いでいるので、放っておくとしよう。何かあったら直ぐに吠えて教えてくれるはずだ。

 土倉は、母屋の二階より少し低い程度の高さだが、それでもかなり大きいと言える。昔ながらの白い漆喰壁に黒い瓦葺き屋根。扉は鉄製のようであり、陽光を反射して冷たく光っていた。そして、鍵を掛ける為の穴や閂も設置されていたが……鍵は掛かっていなかった。

 散弾銃で軽く扉を押してみると、古びた鉄の軋みと共に少しだけ開いて直ぐ止まった。隙間が開くと同時に仄かな腐臭が奥から漂ってくる。しかし、その腐臭は新しい物ではない。時間が相当経っているのか、臭いが乾燥により薄くなっている。

 青年は散弾銃をスリングでぶら下げ、片手で扉を押して隙間を作りながら、フラッシュライトの光で奥を照らした。

 中を覗き込むと、無数の行李やら段ボールが並べられており、その合間に農具が転がっている雑然とした蔵の内部がフラッシュライトの光で切り取られて視界に映る。内部で何かが暴れた形跡や、荒らされたような痕跡は何もない。雑然としているが、それは単に物が多いからであろう。

 視界を少し下ろすと、何やら扉の直ぐ向こうに板のような物が見える。どうやら中からも閂がかけられるようになっていたようだ。手を差し込めるほどの隙間は無いのだが……。

 青年はライトをマチェットに持ち替え、細い刀身を閂の下へと潜り込ませて、上へ持ち上げる。錆びているのか、手応えがかなり重かったのだが、少しずつずれて行き……やがて、外れたのを感じた。

 マチェットを引き抜くと、刀身に剥がれた錆が付着していた。それを拭き取って鞘に戻し、再びショットガンを構える。L字ライトの光を付け、胸元から覗かせてフリーハンドのまま前を照らせるようにした。

 扉を、少し乱暴だが蹴り開ける。大きな音が鳴り響き、犬小屋を観察していたカノンがびっくりして体を跳ねさせた。

 「すまん」

 何事かと驚いて此方に振り返ったカノンに謝罪し、青年はそのまま土倉に入り込んだ。

 ……かび臭さと埃臭さ、そこに交じって古い血臭と腐臭。中二階、今風に言うとロフトかね? 等と思いつつ中を観察する。一階部分は荷物しか置いておらず、隅っこで鼠が一匹死んでいるのが見えた。だが、あれが腐臭の原因ではないだろう。

 中二階に上がる為、階段に片足を掛ける。大きな軋みが響いたので、大丈夫か? と思って更に体重を掛けてみるが、不意に板が割れて落下する、などという兆候は見られなかった。

 それでも一歩一歩慎重に進んで中二階へ上がる。木が軋みを上げる音が一歩踏み出す事に響き、それが大きくなっていくような錯覚を覚える。最後の一段を上り終えるまでもなく、青年はある物を目にした。

 横たわる三つの死体と、蹲った一つの死体を。

 死語かなり時間が経っているのか、死体は殆ど外見から性別や老若の判断が付かないほど腐敗し、ミイラ化していた。骨から肉が削げたような痕が幾つもあるので、もうちょっとフレッシュな時に鼠のような小型生物に啄まれたのだろう。

 服装から考えるに、割烹着を着た死体は写真の中の老婆。寝間着と思しき気軽そうな作務衣を着ている物がその夫。そして、藍色のワンピースを着ているのが二人の孫の妻、であろうか。

 蹲っているのは体格からして男性だろう。身に纏っているのは変色したTシャツと、履き古されて色の落ちたジーンズ。死体の全てが腐敗を終え、殆どミイラ化していた。

 死体の側にしゃがみ込んで少し調べてみると、死因は直ぐに分かった。首筋に大きな切り傷がある。ミイラ化による乾燥で出来た裂傷や、小動物に喰われた為に出来た損壊よりも大きな傷で、頸動脈諸共器官を切断したであろう程深い鋭利な傷だ。間違い無く鋭利な刃物による物であろう。

 横たわる死体三体は全て死因は首の傷だった。そして、正座した状態で蹲る男の近くには血錆びで表面がグズグズに劣化した薪割り用の大きな鉈が転がっている。

 ふと、壁などを照らしてみると……なるほど、色がかなり変わっている。恐らく、首を切ったことによって吹き出た血潮だろう。人間の心臓が血液を送り出す勢いというのは凄まじい物だ。それこそ、足の末端にまで届くのだから想像は難くない。

 その先端が断ち切られ、ホースのようにぶちまけられた。正しくここは血の海だったのだろう。

 これは推測に過ぎないのだが、事件が起こった後に生き延びる為家族全員で此処に立て籠もり、覚悟の末に自決。偶然首を搔ききった事により頸椎が損傷し、死体として復活しなかった……という事なのだろう。

 苦しまず、動く死体となって辱められる事の無かった彼等は幸せだったのかも知れない。助けが来る宛てなど無いのだし、飢え死にして命を失った後も歩き回るよりはずっとマシではないだろうか。 

青年は死体に手を合わせようとして……ふと、顔を歪めて笑った。

 「神も仏もあったものではない……か」

 数秒間、笑っているような、泣いているようなよく分からないない交ぜの感情が渦巻いた笑みを青年は浮かべ……その後、不意に無表情に戻った後で、土倉を後にした。

 後に残されるのは、永遠に黙する家族のみであった…………。
************************************************
 やりたい事を一つ書くと、別の書きたい事が書けなくなるというジレンマ。銃撃戦とかゾンビとの修羅場を書きたいが、キャラに合わないという事で大抵のお約束はスルーしちゃうしね……

 今回は比較的短い時間で仕上げる事が出来ました。とはいえ、次は何時になるかはやはり未定な訳ですが。その分、多分今までで一番の文章量になったと思います。

 そろそろ暖めてきた別の作品もチョロチョロ出してみようかしら……と、思いつつまた次回。感想、誤字指摘などお待ちしております。感想にはできる限り全部返答するつもりなので、長い目で見てやって下さい。

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ガンマの街へ

 ローラン達の目的地は<ガンマ>という前線都市らしい。前線というのは、ボスモンスターの攻略されていない地方にあるの一歩手前、いわば国境に位置する地方のことを言い、多くの生体兵器が潜んでいるため治安はあまりよろしくない。

 しかし、生体兵器達から取れる素材や未知の鉱物資源、あるいは旧文明のロストテクノロジーは、この世界においてなくてはならないものらしく、一攫千金を夢見て多くの者が訪れるのだという。

 当初の目的地である<アルファ>の町は、農場プラントが多く存在する一大生産地だ。あまり面白みのあるところではないそうなので、タクムとしても目的地変更に否やはない。

 ちなみにローランは、<アルファ>で生産された食料を仕入れ、前線都市である<ガンマ>へと運んで売ることで生計を立てる行商人だ。
 ガンマに集められた大量の糧食は更に前線、<国境>を超えた策源地へと運ばれていく。

 行商というと馬に荷台を引かせてのんびりと町から町へと渡る、みたいなのどかなイメージがあるが、そモンクレー
モンクレール ジャケット
アウトレット モンクレール
れはアルファ達のそれは全く異なる。個人の運送業に近い。
 乗り込む貨物自動車(トレーラ)は全長20メートル、全幅は6メートルもあり、一度に30トン以上の荷を運ぶことが出来るそうだ。日本でよく見る大型トラックは6トンから7トン程度の積載量しかないことを考えればその化け物っぷりがよく分かるだろう。ちなみに一般的なワゴン車は全長4.5メートル、全幅は2メートル弱である。公道はまず走れない。

「アイ、到着予定時刻は?」
 携帯電話を取り出し、声を掛ける。するとディスプレイが移り変わり、通話状態になった。
『うん、トラブルがなければ今日の夜明け前には着くんじゃないかな』
 自称高度な人工知能(AI)から返答がくる。

「野営か」
『いいや、多分、そういうことはしないね。さっきの盗賊騒ぎで大分、時間をロスしたから多少のリスクは承知の上で急ぐんじゃないかな。そもそもそういうつもりがあるから、マスターに護衛の依頼をかけたんだよ』
「俺への依頼?」
『そう。拳銃で30メートル先の的(あたま)を撃ち抜くなんて、相当な凄腕じゃなければ出来ないことだよ。しかも飛び交う銃弾をガンガン躱して……マスターさえいれば魔物の群れくらいちょちょいのちょいだと思われたんだろうね』
 それは完全に予測線のおかげで、勘違いも甚だしいくらいの高評価であったが、そのおかげで相場より高い報酬が得られるのだから文句はない。

『早速だけど、マスター。出番だよ』
「出番?」
『うん、ここから三時の方向に生体兵器の群れを発見したよ。距離は600メートル。相手はこちらに気付いていないけど、このままならまず間違いなく発見される』
 草木も生えない荒野である、全長20メートルの化け物トラックなぞ容易く発見されるに違いない。

 タクムは銃座の脇についた無線機を取り出し、運転席へ報告をした。

『タクムさん、そこから狙撃は可能ですか?』
「……やってみます」
 銃座にはタクムより他にいない。雇い上げた護衛に今、狙撃適正のある者はおらず(いるにはいたが、前回の戦闘で死亡している)、類稀なる射撃能力を持つ(ように見えた)彼に銃座を任せるのは当然の帰結であったらしい。

「アイ、どうしよう……俺、狙撃なんてしたことねえ」
『じゃあ、ボクが誘導するね。申し訳ないんだけど、カメラのところを照準器の所に固定してくれないかな』
 タクムはブローニングM2に据付けられた望遠鏡のような照準器(テレスコピックサイト)にスマートフォンを紐で括りつけた。ちなみに紐はジャージの裾を縛るそれを使った。

 ディスプレイにスコープの映像が拡大表示される。拡大された荒野に十字の線が見える。

『じゃあ、調整するね。照準を敵のところに合わせてくれるかな。敵の姿を捉えたら引き金を弾いて、試し撃ちしてみて』
 タクムは機銃を動かし、アイに誘導されたとおりに銃口を生体兵器に向けた。ディスプレイに写る敵は、茶色の表皮を持った犬と蜥蜴の合いの子のような生物に向けた。

-------------------------------------
リザードッグ
犬のような形状をした生体兵器。近接戦闘では爪や牙を用い、遠距離では口内に備えた銃口から生体散弾を放ってくる。また爬虫類のような硬い表皮を持っており、F級程度の防弾性能を持つ。
脅威度こそ低いが、移動速度は最高で時速100キロ、小型で小回りも効くため倒しにくいことで有名。またある程度の社会性を備えており、連携攻撃を行ってくるため、かなり厄介な生体兵器である。

脅威度:D-
生命力:F
近/中/遠攻撃力:E/F/-
装甲:F
俊敏性:C+
-------------------------------------

「拳銃程度じゃ効かないし、動きも素早く群れてくる。厄介なやつだな」
『うん、初心者キラーってことで有名らしいよ。それより、撃って。そろそろあっちも気付く頃だと思う』
 了解、とタクムは頷いて引き金を弾いた。

 ドゴッ!

 炸裂音が鼓膜に響く。銃座に固定されているため、反動こそほとんどなかったが、耳が痛かった。ちなみに銃弾はリザードッグの後方一メートルほどのところに落ちた。

 リザードッグは飛び上がり、キョロキョロとあたりを見回し、周囲を警戒し出す。

『じゃあ、次は照準器に回せるところが二つあるから調整しよう。手前のは右に3クリック、奥のほうは左に2クリック動かして。あ、クリックは動かしたときに鳴るカチカチって音の数のこと』
 タクムは言われた通り、照準を動かす。

『じゃあ、もう一発、敵の胴体に向けて撃ってみて』
 ずれた照準を再び合わせる。先ほど狙ったリザードッグはこちらを発見したのか、遠吠えをしていた。

 まるで犬だな、とタクムは思いつつも引き金を弾いた。

 銃口から放たれるマズルフラッシュと共に12.7ミリ弾、チョーク大の鉄塊が放たれる。

「どうなった?」
『うん、着弾したよ。さすがにマシンガンは威力が桁違いだね』
 ディスプレイには胸から上を消失させた生体兵器の姿があった。周囲には弾けた臓器や吹き出した血と共に螺子やバネのような機械部品が転がっていた。

「なんだ……ありゃ……」
『生物と機械の合いの子、それが生体兵器の正体だよ。生物として備えている内臓や筋肉の他に、戦闘機械としての機関も備えているんだ。
 機械仕掛けの四肢で普通の生き物では考えられない速度で移動したり、体内で弾丸を生成して放ったりする。古代文明を滅ぼした張本人。人類の天敵さ』
「そうか、古代文明とかあったんだな」
 さすがゲーム世界、と感心しつつ、タクムは次なる獲物を探し求め、銃口を動かす。すぐにリザードッグの姿を捕らえた彼は、引き金に指をかけた。

『居たね、マスター。彼らを開放(たお)してあげて』
「おう、任せておけ!」
 アイの淡々とした声――いつもの飄々としたそれとの変化に気付くことなく、タクムは引き金を弾いた。


 トレーラの存在に気付き、追跡を開始した生体兵器達であったが、遠距離からの一方的な狙撃に数を減らされることとなった。10匹ほどを撃ち倒したところで生体兵器は撤退を開始したが、タクムは連中が有効射程から離れるまでの30秒ほどで更に5匹のリザードッグを討伐した。

 有効射程は800メートルという表記こそあったが、それは照準器の倍率の問題であり、アイの優れた誘導――観測手(スポッター)としての助けや、カメラの拡大映像の効果もあって1000メートル先の生体兵器を撃ち抜くことに成功していた。

『マスター、すごいよ! 初めてで1000メートル級の狙撃に成功するなんて!』
「や、やめろよ……恥ずかしいだろ……」
 手放しで褒められたタクムは気恥ずかしげに、頭を掻いた。移動物といっても敵は一直線に逃げていただけだし、ゴルゴ13みたく輻射姿勢からズドンってわけじゃなく、敵が携帯のディスプレイに表示された瞬間、何も考えずにフルオートで連射したらたまたまその内の一発が相手に当たってしまっただけなのである。

『マスターがデレた!』
「デレてねえ! 照れただけだ! と、それよりステータス、どうなった?」
『あいあい、ちょっと待ってね』

-------------------------------------
氏名:タクム・オオヤマ
年齢:18
性別:男性
職業:丁種 開拓者
兵種:拳銃使い(ガンスリンガー) Lv6
弾幕屋(ガンナー) Lv2 new!
狙撃手(スナイパー) Lv5 new!

HP:400/400↑150
SP:370/370↑170

能力値
STR:3.05↑1.25
VIT:2.55↑0.75
AGI:3.40(+0.10)↑0.70
DEX:5.00(+2.67)↑2.20
MND:2.90(+0.31)↑1.20

技能
ハンドガン:1.19
Hマシンガン:1.50 new!
Sライフル:1.50 new!
CQC/CQB:1.24
フットワーク:1.02
精密射撃:2.44
急所撃ち:3.14

スキル
弾道予測
ダブルショット(HG):SP10
バウンドショット(HG/SMG/AR):SP20
フレイムショット(HG/MG/R):SP30 new!
ピアシングショット(HG/HMG/SR):SP10 new!
エアカッター(CQC):SP30
エアシールド(CQB):SP50
ステップ:SP10
ハイジャンプ:SP10
ダッシュ:SP15

アイテム
コルト・ガバメント(M1911)
ジャージ(プーマ)
スーパースター(アディダス)
アッポー アイホン5
M1911用マガジン(装弾済)
M1911用マガジン(空)
.45ACP弾×429
オートマグ×2
モーゼルC96×4
ベルグマンMP18短機関銃×2
トンプソンM1短機関銃×3
ブローニングM1918自動小銃×5
マークⅡ手榴弾×3
.44AMP弾×31
7.63mm×25モーゼル弾×51
9mmパラベラム弾×300
.30-06スプリングフィールド弾×1400
サバイバルナイフ×5
防弾チョッキ(F)×7
防弾マント(F)×4
鉄帽(F)×5
回復薬(F)×5
回復薬(E)×2

所持金:19,914$24¢
-------------------------------------

「兵種が増えてる」
『狙撃手は遠距離から狙い撃ったから取れたんだろうね、あと弾幕屋は最後のほうはフルオートで弾幕をばら撒いてたからかな。どちらも適正有りってことで兵種に追加されたんじゃないかな』
「弾幕についてはともかく、狙撃についてはお前のおかげだな」
『そんなことないよ。いくら補助があったからといって移動物に対して1000メートル級の狙撃を成功させるなんて才能がなくちゃ不可能だよ。もはや神業だね』
「ま、まぐれだよ……」
『デレたー』
「デレてない!」
 スコープに貼り付けた携帯電話(アイ)を取り出し、ポケットに仕舞う。

「そうだ、アルファさんに報告しなくちゃな……」
 通信機をオンにし、生体兵器を追い払った旨を伝える。

『ありがとうございます、さすがはタクムさんですね』
「いや、大したことじゃないです、ほんとに。それじゃあ、移動を再開してください」
『了解しました、引き続き、警戒をお願いします』
 化け物トレーラがゆっくりと走り出す。ゴツゴツとした路面を踏みしめるたびに銃座が揺れる。

 何もない荒野。黄土色の地面と抜けるような空色のコントラストをタクムはしばらく堪能するのだった。


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第5話 仇討ち(前編)





 1

 ゴドン・ザルコスとの二人旅が始まった。
 季節は春である。
 山々は美しい。
 ゴドンは名家の生まれであるが、野営にも粗食にも、まったく不平を言わなかった。
 旅に出た喜びのため見慣れた山野も物珍しくみえるようで、あれこれと話もはずんだ。

 二十日ほどで、トゥオリム領に着いた。
 トゥオリム領は、ポドモス大領主領とエグゼラ大領主領の間にある。
 まっすぐ来ればこれほど日にちがかかる距離ではないはずだが、ゴドンがポドモス大領主領の中を突っ切ることをいやがったため、大きく迂回してきた。
 この辺りまで来ると、バルドは地名も知らない。

「トゥオリム領は、昔からよい小麦の出来る土地でしてなあ。
 実は、わが領の小麦は、五代前の当主がトゥオリム領から種籾を譲ってもらったのですよ」

 と、ゴドンが言った。
 だが、実際にトゥオリム領に入って目にしたのは、予想とはひどくかけ離れた光景だった。
 村々の畑は荒れており、農民の目には生気がない。
 家畜は痩せており、数も少ない。
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に入っても、活気が感じられない。
 道は広く、商店も多いのに、旅人を歓迎する空気はない。
 暗く疑り深い視線を浴びせてくる。

「|伯父御《おじご》。
 いやな感じの街ですな」

 うむ、とバルドは返事をした。
 初めは師匠とか師父とか呼んでいたが、バルドがいやがったので、伯父御という呼び方に落ち着いた。
 こんな街は早く抜けたいと思ったが、とにかく食事をしなくてはならない。
 ガンツを探して食事を注文した。
 高くてまずい料理だった。

 バルドは、少し前にこらしめた山賊たちの話を思い出した。

 あの三人は、トゥオリム領で木こりをしていたと言った。
 トゥオリム領では、税が高く、取り立ては厳しく、貧しいものはますます貧しくなっているという。
 税が払えない家は、子どもや女が連れ去られて売り飛ばされてしまう。
 取り立て役人に抵抗すると、むごい目に合わされる。

 しかし、エンバという義侠心のある男がいて、あまりに無法な取り立てから村人を守った。
 エンバを慕う男たちが集まり、一つの勢力になり、働き手のない家を助けたり、食べ物を融通し合ったりした。
 あの三人も、エンバの腕っ節と男気に惚れて、その舎弟となった。

 ところがあるとき、領主のもとにひどく腕の立つ護衛が二人雇われた。
 その護衛にエンバは切り殺され、手下たちも次々殺された。
 三人は何年も逃げ隠れしたあと、ようやくメイジア領の向こうにまで逃げて、旅人から食料や品物を奪い取って糊口をしのいでいたのだという。

 ここがそのトゥオリム領である。

 バルドとゴドンは、早々にガンツを出た。
 二人並んで馬を進める。
 と、前方からも馬で来る者がある。
 三人だ。

  む?

 バルドは、妙なものに気が付いた。
 屋根の上に人がいる。
 じっと身を伏せ、前方をうかがっている。
 こちらにやってくる馬上の三人を見ているようだ。

 三人が通りかかると、人々は道の脇にどいて平伏していく。
 領主様だ、おい、領主様だぞというささやきが交わされている。
 では、あれがトゥオリム領主か。
 後ろの二人は護衛なのだろう。
 護衛の一人が領主の前に出た。
 何かを感じ取ったのだろうか。
 それにしては、三人とも歩調を変えずに進んでくる。

 屋根の上の男が何かを取り出した。
 弓だ!
 領主を襲撃しようとしているのだ。
 注意してやらねばならんかのう、と思ったが、その必要はないようだった。
 護衛は、明らかに気付いている。

 襲撃者が矢を射た。
 襲撃者は一人ではなかった。
 バルドに見えない場所にもう一人射手がいて、二人は同時に屋根の上から領主を射た。
 だが、その矢が領主に届くことはなかった。
 二人の護衛が空中で切り落としたからである。

 ひれ伏していた人々の中から、三人が突然立ち上がって領主に駆け寄った。
 それぞれ手に剣を持っている。
 剣は平民の持つ物ではない。
 恐らく武士なのだろう。

 一人は、右手で剣を振り上げて襲い掛かった。
 一人は、腰だめに剣を構えて突きかかった。
 一人は、両手で構えた剣を右上に振りかぶった。
 護衛の二人は、雷光のごとき剣さばきをみせた。
 三人の襲撃者は、みな喉を斬り裂かれ、血を吹き出しながら死んでいった。

 屋根の上の二人は、次の矢を射ようとした。
 護衛の一人が投げた短剣が、射手の一人に当たり、射手はうめきながら落下した。
 護衛の一人は馬を御して後ろ足で、もう一人の射手がいる家を蹴った。
 家の壁と屋根が大きく揺れ、射手は足を滑らせて落ちた。
 その落下する射手に護衛は剣を走らせた。
 落下した射手の喉首は斬り裂かれていた。

 最初の射手は、胸に短剣が刺さったまま、まだ生きている。
 驚いたことに、立ち上がってその短剣を抜き、領主に走り寄った。

「せめて、せめて一太刀!」

 叫びながら領主に襲い掛かったが、その願いはかなわなかった。
 護衛が剣のつかで頭を殴って昏倒させたのだ。
 護衛は短剣を取り返し、血で汚れた刃を襲撃者の服でぬぐってから隠しにしまった。
 
 この様子を、領主は平然と見ていた。
 いや、平然とではない。
 その顔には残虐な笑みが浮かんでいる。
 そして、近くにいた役人らしい男に、生き残った襲撃者を城に運ぶよう命じて、そのまま歩き去った。
 バルドとゴドンの前を通るとき、ちらと二人を見た。
 領主の前で下馬しない二人をとがめるでもなく、かといってあいさつを送るでもなく無視して。
 護衛の二人は、バルドとゴドンのほうを見ようとはしなかった。
 だが油断なくこちらの気配を探っていた。
 三人が過ぎ去ると、街の人々の話し声が聞こえてきた。

「お、おい。
 ありゃあ」

「おう。
 ありゃあ、この前全財産を没収されて自殺した材木商のせがれじゃあねえか?」

「小さいころ貴族の家に養子にいったっていう?」

「それよ。
 生みの親の復讐をしようとしたんだなあ」

「その貴族もつぶされるぞ、こりゃあ」

「また死体が増えるわけか。
 まったく、なんてろくでもねえ街なんだ」




 2

 二人は街を出た。
 山一つ越えれば、ガザ領である。
 この時刻に街を出ると、山中で野宿することになるが、そのほうがましだと思った。

 それにしても、護衛二人は凄まじい手練れだった。
 対人用の剣技を極めたといっていい技前だった。
 ゴドン・ザルコスも、先ほどの二人の技が気になるようで、

「すごい剣技でしたな、伯父御。
 伯父御なら、あの二人に勝てますか?」

 と、大胆な質問をしてきた。
 バルドは、

  あの二人を同時に相手にしたら、勝ち目は薄かろうのう。

 と、いささかはったりを利かせた返答をした。
 二人を同時に相手取ったら勝ち目が薄いということは、一対一なら負けないと言っているようなものだ。
 実際には、一対一でもあちらのほうが剣の腕は上なのに。
 だが、実戦ならやりようはある、ともバルドは思っていた。
 不思議と、あの二人が勝てない相手だとは感じなかった。

 ヴェン・ウリルに会う前なら、こうは感じなかったかもしれない。
 しかし、ヴェン・ウリルほどの桁外れの達人と命懸けの決闘をしたあとでは、あの二人の強さは底の浅いものにみえた。
 あの二人は、襲撃を受ける前もあとも、自分たちの強さを全身から放っていた。
 対して、決闘を始める前と決闘が終わったあとのヴェン・ウリルは、強さをまったく感じさせなかった。
 中身のたっぷり詰まった樽は、音を立てないものである。
 剣筋そのものは鋭かろうと、あの二人にはいくらでもつけいる隙はある、と今のバルドは感じている。

「それにしても、喉ばかりを切っておりましたな。
 ああいう剣の流儀があるのですか」

 切っ先で喉を掻き斬れば、剣を痛めずにすむ。
 が、先ほどの殺し方は、そのためではおそらくない。
 喉を切られた人間は、反撃する力を失うが、即死はしない。
 息の漏れる妙な音を立て、苦しみもがき、血を吹き出しながら、徐々に死ぬ。
 首の骨を断つほど深く斬ればすぐに死ぬが、先ほどの剣筋は、わざわざ浅く喉を斬り裂いていた。

  人の苦しみを見て喜ぶ残酷な人間は、ああいう斬り方をすることがあるのう。

 バルドは小さくつぶやいた。
 人の良いゴドンは、絶句している。
 おそらくは、あの領主の趣味なのだ。
 長年それに従って人を殺している二人の護衛の心も、おそらくゆがんでいる。




 
************************************************
7月25日「仇討ち(後編)」に続く

10.26_249
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あ希望にとっては」
「二人共お祖母ちゃんみたいなものだよ」
 とても暖かい顔になってだ。希望は二人のことを話した。
「その人はおばちゃん、妹さんはポポちゃんって呼んでるけれどね」
「ポポちゃん?」
「何か昔からその仇名で」
 そのだ。おばちゃんの妹のそれだというのだ。
「そう呼ばれているんだ」
「だから希望もそう呼ぶのね」
「そうだよ。二人共凄くいい人でね」
 その暖かい顔での言葉だ。
「僕。いつも二人に可愛がってもらってるんだ」
「その人達と一緒に」
「暮らせたらいいな。僕の親っておばちゃん達を嫌ってるけれど」
「何でなの?」
「二人共自分勝手で。自分達以外の人間は嫌いだから」
 残念ながらそうした人間もいる。鼬の様だが鼬より性質が悪い。
「そうした人達だからね」
「難しいね。そういう人達って」
「一度おばちゃん達に話してみるよ」
 その二人にだというのだ。
「おばちゃん達さえいいって言ってくれたらね」
「おばちゃん達と一緒に暮らすのね」
「そこから学校にも通えるから」
 その条件もあるからだというのだ。
「そうしたいね」
「そうなるといいね」
 千春は希望ニューバランス 998
スニーカー ニューバランス
ニューバランス 修理
の横から彼に言ってきた。
「希望にとっていいことだよね。それにね」
「それに?」
「千春その人達にはまだ会ってないけれど」
 だがそれでもだとだ。千春は言うのだった。第九話 決意を述べてその一

                  第九話  決意を述べて
 希望は千春にだ。真人に述べた決意をだ。
 プール

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柿锵ⅳ颏膜?


(つづく)



第2話 夢は屯(たむろ)する (その1254)

2階の席に戻った源次郎は、早速、その分厚い電話帳を捲りにかかる。

タイトルには「職業別電話帳」とある。
平成の今では「タウンページ」というタイトルに変更されているが、要は、特定のエリアの業務用電話番号を職業別に区分?集約して掲載したものだ。
もちろん、その発行元は電電公社、今のNTTの前身である。

電話帳には、この「職業別」とは別に「50音別電話帳」というものがあった。
特定のエリアの電話番号をその契約者の名前を50音順に網羅したもので、今の「ハローページ」にあたるものである。
ただ、現代とシャネル バッグ 2013
シャネル ヴィンテージ バッグ
シャネル バック
決定的に違うのは、個人宅の電話番号が欠落することなくほぼ網羅されていた事実だ。つまりは、掲載を断る人など殆ど居なかったのだ。
「自宅に電話があること」自体がある種のステータスだったという背景もあるだろう。
電話帳に自分の名前が載ることにある種の誇りを感じたものであった。
現代ほどに「個人情報」が重視されることもなかった何とも長閑な時代である。
自宅に電話を引けば、その番号を50音別電話帳に載せるのが当然だとされた好き時代であった。


「ええっと???、だ、代書屋さん???と???。」
源次郎は、そうつぶやくようにしながら「た行」のページを追う。
そう、まずは探している業種?職業を見つけ出さねばならないのだ。
電話帳に「代書屋」という職業が区分されているかどうかも知らなかったが、まずはそこから始めるしか方法が見つからない。

「あっ、あった~! ???。」
「代書」という文字を見つけて、まずはほっとする源次郎だった。

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盲皮长趣馈?

源次郎が美由紀と出会ってからというもの。
初日は別として、ベッドに入るのはいつも一緒だった。
一緒に風呂に入るから、ベッドに入るときには化粧を落としていた。
ふたりともが全裸で寝ていた。
ショーツを穿いた美由紀を見たのは、初日だけだった。
その後は、昼間でも穿いていない。
そして、何より、セックスはすべて美由紀主導だった。

(ど、どうしてなんだ?)
源次郎は、改めて美由紀の顔を見つめるようにする。
その答えが半分分かりかけている自分が怖くなっているからだ。


(つづく)



第2話 夢は屯(たむろ)する (その986)

(こ、これが「山田美貴として???」ってことなのか???。)
源次郎はそう思わざるを得なかった。

美由紀は、それこそ必死の思いで、日頃の自分を押さえ込んでいる。
如何にも、「アグ 偽物
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今の私は佐崎美由紀ではない」と主張しているようにだ。
だからこそ、美由紀らしくない行動ばかりとなるのだ。
少なくとも、源次郎にはそう受け取れる。

(そ、それって???。)
源次郎は、その先を考えるのが怖い。


いろんな偶然が重なった結果なのだろうが、ここ、北海道で美由紀と出会った。
いや、佐崎美由紀というストリップ界のトップスターと???、と言う方が正しいだろう。
そして、これまたひょんなことから、その美由紀の付き人のような仕事をすることになった。
そして、嵐のような数日が流れた。

この間、源次郎にとっては、まるで夢物語の中にいるような出来事ばかりだった。
どうしてなのかは未だにはっきりとはしないが、兎も角、この美由紀には好感を持たれたようだった。
それが表面的なものなのか

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第二十一話 人狼その九

「二人もいい」
「そうよね。じゃあ帰ったらね」
「二人で整理体操だな」
「ええ」
 にこりと笑う若奈だった。彼等は帰ると本当に二人で整理体操をした。それからも牧村はトレーニングを行った。それが終わってから家に帰る。家に帰ってもまだ日は高い。途中で店に寄ろうとしたがふと気が変わって道の橋の上でサイドカーを止めた。そうしてそこで下に流れる川を見ながら休息を取ることにした。しかしここで、であった。
「貴様か」
「暫くぶりだな」
 まず彼の目の前に出て来たのは青年だった。その鋭い顔を牧村に向ける。
「相変わらず生きているようだな」
「俺は死なない」
 牧村は橋の手すりに自分の身体を背中からもたれさせていた。そ
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グッチ ブランドのうえで両肘をその手すりにかけそのうえで青年に応えていた。
「少なくとも貴様等に倒されることはない」
「相変わらず気が強くて何よりだ」
 青年は牧村のその言葉をまず受け取った。
「しかしだ。今回はどうか」
「今度の相手は貴様の配下か」
「一人はな」
「一人は、というのだった。
「俺の配下だ」
「一人は、か」
 牧村も彼の今の言葉で察したのだった。
「ではもう一人は」
「俺が連れて来た」
 青年の左手から急にもう一人出て来た。まるで彼の影から出て来るようにして。それはあのロッカーであった。
「この俺がな」
「ハードロッカーか」
「その姿を取っているつもりだ」
 ロッカーは今は黒いサングラスをしていた。そのサングラスに左手の人差し指と親指をかけながらそのうえで牧村に対して答えてきたのだった。
「だからこそそう言ってもらって何よりだ」グッチ ハンドバッグ
「貴様が新しい魔神だな」
「そうだ。人狼だ」
 彼は己のありのままを牧村に告げた。
「それが俺だ」
「今度は人狼か」
 牧村は彼の言葉を聞いて述べた。
「これで七柱か」
「そして貴様が逢う最後の魔神だ」
 ロッカーは不敵な笑みを口元に浮かべて言ってみせた。
「この俺がな」
「さっきも言ったが俺は貴様等に倒されることはない」 
 手すりに背中をもたれさせかけたままの言葉だった。
「何があろうともな」
「では。ここでもか」
「そうだ。戦うからには勝つ」
 今の言葉は宣言であった。
「何があろうともな」
「面白い。それではだ」
 ロッカーの笑みがさらに深いものになった。そうして。
「場所はここでいいな」
「望むところだ」
 こう返す牧村だった。
「何処であろうといい。貴様等が望む場所でだ」
「よかろう。それならばだ」
「そうだな。私もここでいい」
 ここでもう一人の声がした。それは。
 牧村と二人で魔神達を挟み込む形になっていた。死神は青年とロッカーの後ろにいた。そこでハーレーを後ろにして立っているのであった。
「貴様等がここで戦いたいというのならな」
「死神か」
「如何にも」
 ロッカーの言葉に応え口元だけで笑ってみせてきた。
「そういう貴様は人狼だな」
「俺のことはすぐにわかるのだな」
「気配でわかる」
 今度はこう答えた死神だった。

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第三話 日々その六

「そうすると少しずつだが違ってくるさ」
「そういうものか」
「お兄さんもそうじゃないのかい?」
 カップを磨きながら牧村に問うてきたのであった。
「何かしてるだろ、毎日」
「いや、別に」
 この問いには何の感慨も意志も見せずに答えた。
「何もないな」
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「けれどやらなければいけないことができたんだろう?」
「ああ」
 それは否定しない。肯定すると共にまたあのことを思い出すのだった。髑髏天使としての闘いのことを。そのことを思い出すのであった。
「だったらそれに関することを毎日続ければいいさ」
「毎日か」
「そうすれば全然違うからね」
「そういうものだな」
 その二杯目の紅茶も残り少なくなっていた。もうこれで終わるつもりだった。
「しかし。それでも」
「それでも?」
「何をするべきか」
 それが今一つわからないのだった。何しろ闘いというものを経験したことは今までなかったからだ。それで何をすればいいのか。わかる筈もなかった。
「それすらな」
「まあやってるうちに見つかるさ」
「見つかるか」
「見つかるものだ。やっていたらな」
 マスターは語り続ける。
「そのうち見つかる。そういうものだよ」
「正直なところそうなのかと思う」
 これは牧村の本音の言葉だった。
「見つかればいいがな」
「大丈夫だって。それは」miumiu メンズ
「ああ。さて」
 ここで飲み終わった。それを自分で確認してからまたマスターに声をかけた。
「お勘定だな」
「一杯分でいいよ」
「いいのか」
「二杯目はサービスさ」
 相変わらずコップを拭きながらの言葉だった。笑顔も忘れてはいない。
「だからさ。いいんだよ」
「ではそれでいいな」
「ああ、お金はそこに置いてくれたらいいからさ」
「わかった」
 マスターの言葉に頷き懐から財布を取り出した。そこから小銭を出してそれをカップの横に置いたのだった。そのうえで席を立った。
「それではな」
「じゃあまた今度な」
「今度はデザートも頼むか」
「クレープかい?それともケーキかい?」
「クレープだな」
 声は微かに笑った感じになっていたが表情は変わってはいない。
「それを頼みたいな」
「クレープかい」
「それも食べてきていると思うが」
「勿論だよ。クレープもね」
 ここでマスターは少し薀蓄に入った。
「皮が問題なんだよ。美味しい皮にするには一朝一夕にはできないんだよ」
「そこでまた基本か」
「そういうことさ。それじゃあね」
「ああ、またな」
 最後にこう述べて店を出た。店を出てそのまま家に帰りこの日は終わった。次の日彼は山の方に行っていた。学校が終わってただのドライブであった。
 二車線の道路の左右は見渡す限りの森であった。緑の木々が連なっている。その木々の間を走っているとやがて目の前に。何かが立っているのが見えた。彼はそれを見てあることを察した。
「出て来たな」
「髑髏天使だな」
 見れば外見は普通の男だ。若い背の高い男である。
「そうだな」
「だと答えたらどうする」
 サイドカーを止めた彼はそれから降りながらこう男に言葉を返した。
「どうするつもりだ」
「決まっている。食らってやる」
 これが男の返答だった。

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